東京地方裁判所 平成6年(行ウ)74号 判決 1995年11月29日
原告
甲野太郎
外一五名
原告ら訴訟代理人弁護士
山本哲子
同
小林克信
同
井上洋子
同
土橋実
被告
東京都公安委員会
右代表者委員長
河野義克
右訴訟代理人弁護士
山下卯吉
同
武藤正敏
同
福田恆二
右指定代理人
長谷川道雄
外三名
主文
一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 原告らの請求
被告が平成五年一二月二七日付けで有限会社丸愛に対してした東京都国分寺市南町<番地略>丸福ビル一階を営業所とするぱちんこ屋「ビーム国分寺」の営業許可を取り消す。
第二 事案の概要
一 本件は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法」という。)二条一項七号所定のぱちんこ屋について、被告がした同法三条一項所定の風俗営業の許可が違法であるとして、当該ぱちんこ屋の近隣居住者(又は近隣の飲食店営業者)である原告らがその取消しを求めたものであり、原告らに右許可の取消しを求める原告適格があるかどうかが争われた事案である。
二 以下の事実は、当事者間に争いがない。
1 ぱちんこ屋等の風俗営業を営もうとする者は、営業所ごとに、都道府県公安委員会の許可を受けなければならず(法三条一項)、都道府県公安委員会は、右許可の申請に係る営業所が、「良好な環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域」(以下「風俗営業制限地域」という。)内にあるときは、許可をしてはならないこととされている(法四条二項二号)。そして、法施行令六条は、条例で風俗営業制限地域を定める基準として、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域(住居集合地域)」(一号のイ)及び「その他の地域のうち、学校その他の施設で特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある施設として都道府県の条例で定めるものの周辺の地域」(同号のロ)を定めており(なお、同条二項によれば、右ロの地域は、施設の敷地の周囲おおむね百メートルの区域を限度とする。)、東京都の法施行条例(昭和五九年東京都条例第一二八号。以下「条例」という。)三条一項は、東京都における風俗営業制限地域として、都市計画法八条一項一号所定の第一種住居専用地域、第二種住居専用地域及び住居地域(同項一号本文。以下「住居集合地域」という。)並びに学校、図書館、児童福祉施設、病院及び診療所(以下「保護対象施設」という。)の敷地の周囲百メートル以内の地域(同項二号本文)を定めている。
2 有限会社丸福商事(以下「丸福商事」という。)は、平成五年六月、東京都国分寺市南町<番地略>の土地上に地上三階地下一階建ての建物(別紙図面の斜線で表示した建物。以下「本件建物」という。)を新築し、これを所有している。
本件建物の地上一階はパチンコを行う遊技場(以下「本件遊技場」という。)であり、その二階及び三階は駐車場で、前面(南側)道路から右駐車場への車両の出入りのため、スロープ状の誘導路(以下、右駐車場と誘導路をあわせて「本件駐車場」という。)が設けられている。
本件建物の前面(南側)道路を挟んでその両側は都市計画法上の近隣商業地域に指定され、その外側の地域が第一種住居専用地域に指定されているところ、本件建物のうち、本件遊技場部分は右近隣商業地域内に存在するが、本件駐車場の一部(誘導路の一部)が第一種住居専用地域にはみ出して存在している。
3 丸福商事は、本件建物を新築したころ、本件遊技場を有限会社丸愛(以下「丸愛」という。)に賃貸し、本件駐車場を株式会社八千代商事(以下「八千代商事」という。)に賃貸した。丸福商事、丸愛、八千代商事の三社の代表取締役は、もともと木村文雄が兼ねていたが(この点は、弁論の全趣旨によって認められる。)、丸愛の代表取締役は、平成五年六月二一日、木村文雄の娘である佐藤容子に交代し、八千代商事の代表取締役は、同年七月三一日、橋本節子に交代した。
4 丸愛は、平成五年八月二日、本件遊技場で「ビーム国分寺」という名称のぱちんこ屋(以下「本件ぱちんこ屋」という。)の営業許可を申請したが、本件建物の近隣の多数の住民等は、かねてより本件建物でのぱちんこ屋営業に対する反対運動を行っており、その運動の一環として市議会や被告に対しても働きかけを行っていた。
5 丸福商事は、平成五年一一月下旬、本件駐車場を八千代商事に賃貸することを止め、新たに株式会社田村商事に賃貸することとした(なお、丸愛は、本件建物の外部に一七台収容可能の専用駐車場を設けている。)。
その後、被告は、平成五年一二月二七日、本件駐車場と本件ぱちんこ屋はその経営者を異にしているうえ、本件ぱちんこ屋は別に利用客等のための駐車場を設置しており、本件駐車場は本件ぱちんこ屋の客以外の一般人も利用していることから、本件駐車場は本件ぱちんこ屋の施設とは認められず、本件ぱちんこ屋の営業所は風俗営業制限地域に存在していないとして、丸愛に対し、本件ぱちんこ屋の営業について法三条一項所定の許可(以下「本件許可」という。)をした。
6(一) 原告甲野太郎は、別紙図面中の①と表示の建物に居住しており、その居宅の敷地と本件建物との間の距離は約一〇〇メートルである。
(二) 原告乙山よしは、同図面中の②と表示の建物に居住しており、その居宅の敷地と本件建物との間の距離は約二五メートルである。
(三) 原告乙山一男及び原告乙山秋子は、乙山よしの右居宅二階及びその隣の同図面中の③と表示の建物の一部を利用して居住している。
(四) 原告丙村二郎及び原告丙村冬子は、同図面中の④と表示の建物に居住しており、その居宅の敷地と本件建物との間の距離は約一三メートルである。
(五) 原告丁川花子、原告丁川勝、原告戊木玉子及び原告戊木正は、同図面中の⑤と表示の建物に居住しており、その居宅の敷地と本件建物との間の距離は約六メートルである。
(六) 原告春上静子及び原告春上五郎は、同図面中の⑥と表示の建物に居住しており、その居宅の敷地と本件建物との間の距離は約八メートルである。
(七) 原告夏山次男及び原告夏山和子は、同図面中の⑦と表示の建物に居住しており、その居宅の敷地と本件建物との間の距離は約五〇メートルである。
(八) 原告秋田太郎及び原告秋田良子は、同図面中の⑧と表示のビル内の部屋を賃借して「パスタせもりな」という名称のイタリア料理専門店を経営しており、そのビルの敷地と本件建物との間の距離は約四〇メートルである。
三 原告らは、本件駐車場が本件遊技場と一体の構造を有し、その管理・利用の実態に照らし用途上も一体のものとみられることなどを理由に、本件駐車場は本件ぱちんこ屋の営業所の一部というべきであるとして、本件駐車場の一部が第一種住居専用地域にはみ出して存在している以上、本件許可は違法であると主張し、本件訴えを提起した。
これに対し、被告は、原告らには、本件許可の取消しを求める原告適格がないとして、本件訴えの却下を求めた。
四 争点及び争点に関する当事者の主張
1 争点
原告らが、本件許可の取消しを求めるについて法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法九条)に該当するかどうか。
2 被告の主張
行政事件訴訟法九条にいう「処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」とは、当該処分により直接に自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきであり、ここに法律上保護された利益とは、行政法規がその保護を目的として行政権の行使に制約を課すことによって保障される私人の利益をいうものである。
ところが、法が、風俗営業、風俗関連営業、深夜における飲食店営業及び興行場営業に関して様々な規制を行うのは、あくまでも、地域の風俗環境を清浄な状態に保持する等の公共の福祉のためであり、それ以外の何ものでもないから、法及び条例による住居集合地域における風俗営業の規制は、その地域の現在及び将来における不特定多数者が等しく享受する清浄な風俗環境という一般的公益の保護を目的とするものであって、近隣住民等が清浄な風俗環境の中で生活したり、営業を行うという利益を個別的に保護することを目的とするものでないことは明らかである。
したがって、本件ぱちんこ屋の近隣に居住し、あるいは近隣で飲食店を営業する原告らは、本件許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とはいえないから、本件訴えの原告適格を有しないというべきである。
3 原告らの主張
(一) 法の目的は、「善良の風俗の保持」、「清浄な風俗環境の保持」、「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止」にあり(法一条)、そのうち「清浄な風俗環境の保持」は、単に性道徳や風俗の浄化を意味する「善良な風俗の保持」とは異なり、具体的な一定の地域の環境浄化を意味するものであり、そのため、法は、環境浄化を必要とする一定範囲について風俗営業制限地域を定めるだけでなく、地域の環境にきめ細かく配慮し、周辺住民の生活利益を個別的に保護するために、(1) 営業の許可は営業所ごとに行うものとし(法三条)、各営業所に管理者を置くことを義務付け(法二四条)、(2) 営業所から発せられる騒音・振動を規制し(法一五条)、(3) 営業所の広告・宣伝を規制しているのである(法一六条)。
(二) 風俗営業制限地域の定めにつき法の委任を受けた条例は、第一次的に、住居集合地域として都市計画法上の第一種住居専用地域等の用途地域を掲げ(条例三条一項一号)、第二次的に、保護対象施設の周囲を掲げており(同項二号)、その規定の仕方からも明らかなとおり、右の規制の趣旨は、まず、人の生活の本拠である住居が集合している地域内で暮らす人々に対し、清浄な風俗環境が保持された静穏な生活を具体的に保護しようというものであり、次に、その保護からはみ出した地域のうち、住居集合地域と同様の風俗環境の保全が必要な地域として、補充的に、保護対象施設の周囲を保護しようというものである。
そして、保護対象施設の周囲に風俗営業が許可された場合には、当該保護対象施設の設置者はその許可の取消しを求める原告適格があると解されているのであって、このように補充的に風俗営業制限地域とされている地域にあってさえ、一定の者に風俗営業の許可の取消しを求める法律上の利益があるとされているのであるから、清浄な風俗環境を保持するため第一次的に風俗営業制限地域とされた住居集合地域にあっては、当然に、住居集合地域の一定範囲の第三者が風俗営業の許可の取消しを求める法律上の利益を有するというべきである。
(三) 本件のように、第一種住居専用地域内の営業所に係る風俗営業の許可について、その取消しを求める原告適格を有する第三者の範囲については、条例が何らの制限もなく「第一種住居専用地域」と規定していることからすれば、同地域に居住する者全員が、法によって保護された生活利益の侵害を受ける者として、原告適格を有すると解すべきであるが、仮に、そうでないとしても、第一種住居専用地域内のうち当該営業所と生活圏をともにする住民、あるいは、第一種住居専用地域内のうち当該営業所から一〇〇メートルの範囲に居住する住民は、その原告適格を有するというべきである。
(四) 原告らは、いずれも本件ぱちんこ屋から一〇〇メートル以内に居住し、あるいは営業場所を有している者であり、本件ぱちんこ屋の営業の開始によって、光害(ネオンサインによる)、騒音、喧騒などの生活上の具体的な不利益を被っているのであるから、原告らには本件許可の取消しを求める原告適格があるというべきである。
第三 争点に対する当裁判所の判断
一 行政事件訴訟法による処分の取消しの訴えは、処分を取り消すことによって処分の法的効果として生じた権利利益の侵害状態を解消し、国民の権利利益を救済することを目的とする訴訟であり、右権利利益の救済と離れて一般的な行政の適正な運営の確保自体を目的とするものではないから、同法九条にいう「処分……の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」とは、当該処分の法的効果として自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである。
二 ところで、右にいう法律上保護された利益は、当該処分の本来の法的効果として実体法上制限されることになる利益(この場合の行政処分は、いわゆる侵害処分として、私人に対し、実体法上の利益が制限されることを受忍すべき義務を課すものである。)に限られるものではなく、当該処分の根拠をなす行政法規が個人の具体的利益を個別的に保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されることになる利益(すなわち、その制約に違反しないで行政権が行使されることにより当該行政法規を通じて保障されることになる利益であって、この場合は、行政処分の法的効果として、実体法上の利益が制限されることを受忍すべき義務が課されるわけではない。)も含まれると解される。そして、行政権の行使に制約を課すことにより保障される利益が不特定多数者の利益である場合であっても、当該行政法規の趣旨・目的、当該処分を通して保障しようとしている利益の内容・性質等を考慮して、当該行政法規がその不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめることなく、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解されるときは、かかる行政法規を通じて保障される利益もまた右法律上保護された利益に当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による利益の保護を無視されたとする者は、法律上保護された利益を侵害された者として、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有すると解するのが相当である。
三 そこで、以下、原告らが本件許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たるかどうかについて判断する。
1 本件許可は、本件遊技場で風俗営業であるぱちんこ屋を営むことの許可であり、丸愛に対し、一般的に禁止されている右営業行為について、その禁止を解除するものであって、当該営業所の近隣住民等に対し、右許可の法的効果として、その実体法上の権利、利益に制限を加える処分でないことは明らかである。したがって、原告らは、本件許可によって、その主張する騒音等の被害を受忍すべき義務が課されることになるものではなく、仮に、本件ぱちんこ屋の営業によって、原告らの実体法上の権利、利益が侵害されるとすれば、本件許可の取消しを待つまでもなく、その権利、利益に基づいて、その侵害の回復を求めることが可能なのであって、本件許可があることによってその権利、利益の侵害を甘受しなければならない地位に立たされるわけでないことはいうまでもない。
2 そこで、次に、第一種住居専用地域内での風俗営業の許可を禁止した法四条二項二号及び条例三条一項一号が、不特定多数者の利益という一般的公益の確保のみならず、その利益が帰属する個々人の個別的利益としても保護する趣旨であるかどうかについて検討する。
(一) 法は、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止」するため、風俗営業等について営業区域等を規制することを目的とする旨定め(法一条)、営業区域に関する規制として、法四条二項二号は「良好な風俗環境を保全」する必要がある風俗営業制限地域での風俗営業の許可を禁じ、同規定の委任を受けた条例三条一項一号が風俗営業制限地域の一つとして第一種住居専用地域を定めているものであるが、右法の文言からすれば、第一種住居専用地域が風俗営業制限地域とされているのは、同地域が低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定められた地域(都市計画法九条一項)であることから、その地域における「清浄な」あるいは「良好な」風俗環境を保全するという目的を達成するためであって、いわばその地域に現在のみならず将来においてかかわりを持つことになる不特定多数者のために、その地域全体の良好な環境の保持という一般的公益を保護しようとしたものであり、現にその地域に居住する者等の具体的利益を個別的に保護することをも目的としているものと解することは困難であるといわざるをえない。
しかも、風俗営業の許可は、第一種住居専用地域等の住居集合地域に居住する者等の生命・身体・財産といった一般的公益の中に吸収解消され難い個別性の強い私的利益に対する侵害を招来するという性質の処分ではないことを考えると、法四条二項二号及び条例三条一項一号が、原告らの主張するような、住居集合地域内の居住者等の清浄な風俗環境のもとで静穏な生活をする利益なるものを個別的に保護することをも目的として、第一種住居専用地域での風俗営業の許可を禁止している趣旨の規定と解することはできないといわなければならない。
右のような法四条二項二号及び条例三条一項一号による規制の趣旨・目的、風俗営業の許可の性質等からすれば、右規定による第一種住居専用地域内での風俗営業の許可の禁止は、第一種住居専用地域が良好な住居環境を保護するため定められた地域であることに着目して、その地域全体の環境の保全を図るという見地から定められたものであって、同地域内の居住者等の具体的利益を個別的に保護することをも目的としている規定と解することはできないといわざるをえない。
(二) 原告らは、風俗営業の許可が営業所単位であり、各営業所に管理者を置くことが義務付けられ、各営業所につき騒音・振動や広告・宣伝方法の規制がされていることは、法による営業区域の規制が、営業所周辺の住民の私的利益に配慮し、周辺住民の生活利益を個別的に保護することをも目的としていることを裏付けるものである旨主張する。
しかしながら、風俗営業者が遵守すべき営業時間(法一三条)、騒音・振動(法一五条)、広告・宣伝(法一六条)などの規制は、当該営業所が存する個別的・具体的な地域の事情に着目することなく、一般的な規制として一律に定められているものであり、これらの規制は、いずれも、専ら風俗営業の許可がされた営業所周辺の善良の風俗や清浄な風俗環境といった一般的公益を保全することを目的としたものとみるのが相当であって、これらの規定をとらえて、法が営業所周辺の住民等の利益を個別的に保護する趣旨のものであると解することは困難である。
(三) また、原告らは、風俗営業制限地域の規制は、住居集合地域内での禁止(条例三条一項一号)が第一次的であって、保護対象施設の周囲での禁止(同項二号)が補充的であることを前提とし、保護対象施設の設置者が風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有すると解されている以上、住居集合地域の住民は当然に原告適格がある旨主張する。
保護対象施設の設置者が当該施設周辺の営業所に係る風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有すると解すべきことは原告ら主張のとおりであるが、条例三条一項一号と二号の規定が、風俗営業制限地域としてそのどちらかが第一次的でどちらかが補充的なものであると区別する根拠は見い出し難く、条例三条一項二号による規制は、現に一定の保護対象施設が存在するという個別的な事情を前提に、その設置者が行う活動ないし業務がその性質上風俗営業と相容れない特殊性を有する点に着目し、その活動ないし業務を個別具体的に保護することを目的として、風俗営業の許可を禁止することとしたものと解することができるのに対し、条例三条一項一号による規制は、前記のとおり、一定範囲の者の生活環境上の利益や人格的利益などに着目したものではなく、専らその地域全体の一般的公益を保護することを目的とする規制と解すべきであって、右各規制はその目的・性質等を異にするものであるから、保護対象施設の設置者に原告適格が認められることを理由に住居集合地域の住民にも当然に原告適格があるとする原告らの主張は、採用することができない。
四 以上のとおりであるから、本件ぱちんこ屋の近隣住民等である原告らは(その全員が第一種住居専用地域内の居住者等であるかどうかはさておき)、いずれも本件許可により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者に当たらないというべきであるから、本件許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有しないといわなければならない。
五 結論
よって、原告らの本件訴えは原告適格を欠き不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官佐藤久夫 裁判官橋詰均 裁判官德岡治)
別紙図面 <省略>